作業療法士がサポートするのは、高齢者や障害のある方、けがをした方など多岐にわたりますが、そのうちの一つに「発達障害の方」があります。
発達障害に対する作業療法士の携わり方は、他の専門家とはやや異なるのが特徴です。
作業療法士を志す方は、発達障害に対してどう関わることが求められているのかきちんと把握しておかなければなりません。
そこで、今回は作業療法士における、発達障害のサポートのあり方や、発達支援などについて詳しく解説します。
そもそも発達障害とは?
発達障害とは、脳機能の何らかの異常によって、発達に遅れが生じたり、特徴的な特性が見られたりする障害のことです。
子どもの発達障害の症状としてよく見られるのは、「わがままを言って周囲を困らせる」「自分勝手な行動をして迷惑をかける」「周囲の友達と協力して物事を進められない」などです。
しかし、発達障害は子どもだけの問題ではありません。
近年は大人の発達障害も徐々に注目されつつあります。
子どもの頃から発達障害の兆候が見られたものの、専門的な支援を受けないまま大人になり、生きづらさを感じている大人が増えているのです。
発達障害は、子どもの頃から適切なケアを行うことが重要とされており、その際の関わり方が本人の症状を大きく左右します。
作業療法士の関わり方が、発達障害の方の症状に直接影響するため、サポートする相手の人生に大きく関わる存在といえるでしょう。
発達障害に対して作業療法士はどのように向き合う?
作業療法士は、発達障害に対してどのように向き合うのが適切なのでしょうか。
ここからは、発達障害の子どもたちに対する具体的な発達支援や、サポート内容などについてご紹介します。
認知の観点での支援
発達障害の子どもに対する作業療法士の支援として、まず挙げられるのが「認知」に関する支援です。
手を動かしたり、考えたりしながら、自分なりの表現を楽しんだり、さまざまな動作ができるようにしたりします。
たとえば、工作やお絵描き、習字などが挙げられるでしょう。
また、人間関係の構築の土台づくりである「コミュニケーション能力」にも目を向けて支援を行います。
集団で楽しめる遊びを通して、本人のコミュニケーション能力の向上を図り、自分の思っていること、伝えたいことを適切に言葉にできるようにサポートします。
感覚に関する支援
感覚に関する支援とは、「触れる」「見る」「動く」などの経験を通して、感覚を調整するサポートです。
ブランコに乗って揺れたり、ねんどに触れてみたりするなど、さまざまな感覚を刺激することが、本人の感覚調整につながります。
発達障害を抱える子どもの中には、感覚に対して過敏になってしまう場合もあるため、楽しめる遊びを通して正常な感覚を獲得することが重要です。
また、人間における感覚は学習の基礎でもあるため、必要なサポートの一つといえます。
社会生活を送るための支援
作業療法士は、発達障害の子どもに対して、社会生活を送るための発達支援を行います。
本人にとって適した学習環境を整えるとともに、学習で使用する道具を本人の特性に合わせて調整することなどのサポートが求められます。
とはいえ、無理に学校や園へ促すことはせず、登校や登園が難しい場合には原因を探って解決策を模索していくことも重要です。
あくまでも、発達障害を抱える子どもにとって、負担のない形でサポートする姿勢が作業療法士に求められるありかたです。
病院以外でも発達障害に取り組むケースはある?
作業療法士は、病院以外でも発達障害の支援に取り組むケースがあります。
ここからは、病院以外での支援現場についてご紹介します。
児童発達支援センター
病院以外で発達障害の支援に取り組む場所としては、児童発達支援センターがあります。
児童発達支援センターは、発達障害に関わらず、何らかの障害を抱える子どもが利用する支援センターです。
集団生活に適応するために訓練を行ったり、基本動作を身につけるために動作の練習を実施したりする際に、作業療法士がサポートします。
子どもたちの訓練の支援だけではなく、メンタル部分のケアを担うこともあります。
放課後等デイサービスセンター
放課後等デイサービスセンターは、児童福祉法に基づく施設で、学校の放課後や休日に障害を持つ子どもたちが利用できるサービスのことです。
児童発達支援センターでは、未就学児に対してサポートを行いますが、放課後等デイサービスセンターでは小学生などの就学時に対してサポートを行います。
そのため、支援の内容としても日常生活だけでなく、小学校等の環境に応じて学生生活での「対人関係」や「自己管理」などの支援も行っていきます。
まとめ
作業療法士は、高齢者やけがをした方などの支援を行うイメージがありますが、他にも発達障害の方のサポートを行うケースも多いです。
作業療法士として得た知見や技術を駆使し、本人にとって最適な支援計画を作成するとともに、少しでもより良いほうへと進めるように導いていく役割が求められます。
作業療法士を目指している方は、自分の担う役割や立場を今一度理解し、将来的にどのような活躍をしたいかをイメージしてみてください。